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第90回の夏の京都大会は北京五輪開催の関係から例年より10日ほど早い日程で開幕を迎えたが、7月に入った途端に気温が急上昇。どうやら梅雨明けも早まりそうな勢いで、まるで京都大会の開幕に合わせたかのようにいつもより早い夏が訪れた。
10時の開会式に合わせて8時に家を出たが、その時点ですでに気温は30℃を超えている。今年は暑い夏になりそうだ。
90回の夏は京都産業大附属と京都文教の2校が新たに加わり、史上最多の78校が西京極球場に集まった。しかし城南と西宇治の統合がすでに決まっていて、来年の夏にはまた出場校数が変わる。少子化に伴う公立の統廃合、私学の経営戦略など、しばらくは出場校数の変動が続くのかもしれない。
朝日新聞社のヘリコプターが始球式のボールを投下して開会式が始まった。昨年の優勝校・京都外大西を先頭に、準優勝校・京都すばる、そして抽選会で1番くじを引き当てた城陽の順に78校が西京極の土を踏みしめる。リード役の選手の大きな声に合わせて手足を高く上げるチームもあれば、18人の動きがばらばらのチームもある。ユニフォームも昔と比べると色とりどりになった。目に付いたのが洛水。以前は白と黒を基調にしたクラシカルなユニフォームだったが、帽子、アンダーシャツ、ストッキングが緑色に変わっている。逆に元京都成章の奥本新監督が就任した塔南は縦じまから白と黒のシンプルなユニフォームへと変わった。
出場校が史上最多ということは、入場行進にも時間がかかる。気温は8時の時点より更にグングンと上昇し、プラカードを持つ女子生徒の数名が日射病で体がふらつく。だがその場に倒れ込む前に役員が駆けつけて体を支える。以前に聞いた話では、気分が悪くなった生徒はプラカードの持ち方を変えてサインを送るそうだ。その生徒は気の毒だが、役員が救護に向かうと同時にベンチで待機している女子生徒も駆け足で直行し、素早く入れ替わる機敏な姿には感心した。きちんと代打の心積もりができているのだ。
優勝旗、準優勝盾の返還の後、城陽・浜田尚幸主将の選手宣誓でいよいよ90回の夏が始まる。今年は例年と比べるとかなり長目の選手宣誓だった。浜田主将は懸命に頭の中の言葉を追いながら声を張り上げたのだろう。後で写真を確認すると、ほとんどが目を閉じた写真だった。
第90回の夏は東稜と大江の一戦で幕を開ける。
東稜は3年前の87回大会も開幕試合を引き当てた。ロッテに入団した末永を後半に攻略して南京都に逆転勝ちした試合で、東稜にとって開幕戦は縁起がいいと言えるかもしれないが、中塚監督は試合前、「また開幕戦です」と苦笑いを浮かべている。
確かに開幕試合は難しいだろうと思う。最近はコンディショニング技術を本格的に取り入れ、入念なアップをして試合に臨むチームが増えている。昨秋の準決勝だったと思うが、序盤に大量失点をした龍谷大平安・原田監督が「アップ不足で試合に臨む準備が整っていなかった。今日はコーチを怒ります」と話していたのを思い出す。開幕試合に登場するチームはそれほど大切なアップ時間を取ることができない。中塚監督の苦笑いはそんな懸念から生まれたのだろう。
試合は大江の先行で始まった。初回、先頭の大町がいきなり1塁強襲の内野安打で出塁し、3番・大塚の時に2盗に成功。しかも捕手・北川の送球がセンターへ抜けてしまう。だが三塁を目指した大町の足がもつれ、ちょうど2、3塁間の真ん中で転倒、アウトになってしまった。もし転倒がなければ一死3塁となっていただけに、このプレーは東稜にとって大きかった。形はどうであれ、とにかく1回表を無失点に抑えた中塚監督は大きく手を叩いて選手たちを迎えた。
その裏、東稜は3番・江川、4番・朝野の連続タイムリーで2点を先制。2回にも9番・久永にタイムリーが出て3対0と試合の主導権を握る。だがその後は大江の先発・有田が踏ん張り試合は膠着状態に入る。
東稜にとっては少し嫌な雰囲気が漂い始めるが、ここで踏ん張ったのが2年生エースの久永だった。エースといっても久永はこの試合が公式戦初登板だという。大会前の練習試合で3年生投手が不調で、急遽、夏の主戦投手に抜擢された。スライダーに特徴のある投手だが、久永の最大の武器は気持ちの強さだろう。再三走者を背負いながら浮き足立つことなく後続を断ち、7回まで大江打線を無失点に抑えた。
7回裏の東稜の攻撃時にアクシデントが起きた。1番・石田のセンター前ヒットを処理した大町が足に痙攣を起こして倒れてしまったのだ。大町は痙攣が治まるのを待って何とか守備に戻ったが、江川のセンター前タイムリーヒットを処理した時に再び痙攣を起こし、担架で運ばれて無念の交代となってしまった。厳しい暑さが予想されるこの夏は、こんなシーンをたびたび目にするかもしれない。
終盤の7回に痛い追加点を許してしまった大江だがよく粘った。8回、二死走者なしから5番・内田、6番・河田、7番・北垣に3連打が出て1点を返し、なおも2、3塁の大チャンスを迎える。
ここで大江・山本監督は、これまで好投してきた有田を交代させる勝負に出るが、代打・倉橋は三振に倒れて追加点はならず。8回から登板した1年生・今西は開幕戦の雰囲気に飲まれたのか制球を乱して2点を失い、勝敗は決した。
終わってみれば東稜は6対1の快勝で3年前に続いて開幕1番星を手にした。
第2試合に登場する京都成章は秋、春と連続して1次戦の1回戦で敗退と新チーム結成後結果を出せていない。そのため今大会ではノーマーク的な存在だが、春、秋と不調だった伝統校が最後の夏にきっちりとチームを仕上げてくるのは高校野球ではよくある話だ。最近では2年前の福知山成美がその例に当る。
今年の京都成章は守備がいいと聞いていたが、立ち上がりの1回表、噂にたがわぬ好守備で鴨沂の攻撃を三者凡退に抑える。特に2番・高田の当りはセンター前に抜けたと思ったが、ショート・金澤がファインプレーで防いだ。
その裏、守りで作ったいいリズムが攻撃に繋がる。二死走者なしから3番・金澤が放った打球はライトフェンスを越える大会第1号ホームラン。京都成章がまず1点を先制した。
京都成章・松井監督は今年のチームは打てないと言うが、金澤のホームランが勢いを生み、2回には5安打を集中して一挙4得点。3回にも9番・宮田の三塁打で1点を追加して序盤で6対0と大きくリードを広げた。
エース福士は大量点と堅い守備をバックに快調なピッチングを見せる。奪った三振はわずかに1個と力で押すタイプの投手ではない。だが速いテンポでボールを投げ込んでリズムを作り、そのリズムに野手が乗って軽快に打球をさばく。福士は6回まで1人の走者も出さないまさに完璧なピッチングを見せた。
京都成章が5回にも2点を追加して8対0となったため参考記録となってしまうが7回の福士のマウンドには記録達成が期待された。だがそれを防いだのが代打で出た谷川だった。谷川が叩いた打球はショートへと転がるが大きく跳ね上がったためにさすがの金澤も自慢のフットワークを見せることはできない。待って打球を処理した分、谷川の足が送球よりも一足早く一塁ベースに到達し、記録達成はならなかった。
それにしても、それまで完璧に抑えられていた鴨沂打線が代打・谷川の一振りで初安打を記録するのだから野球は面白い。第62回の夏の甲子園で、佐賀商・新谷が26人目まで1人の走者も許さず、夏の甲子園史上初の完全試合にあと1人と迫りながら、最後の最後に代打で出てきた1年生・世永にデッドボールを与えたシーンを思い出した。
今日の試合結果
東稜6対1大江
京都成章8対0鴨沂(7回コールド)
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