7回、レフトオーバーのタイムリー三塁打を放った大谷大・中川

平成20年4月6日(日) 平成20年度京滋大学野球連盟春季リーグ第2節 太陽ケ丘球場

平成20年京都府春季大会が開幕する今日、京滋大学野球を観に太陽ヶ丘へと行った。
僕の中での観戦優先順位は高校野球が最上位である。高校野球が行われる日に大学、社会人野球を観に行った事は今まで一度もない。もちろん今年も春季大会を観に行くつもりでトーナメント表を眺めていた。だがそれぞれの会場名を見ているうちに気が変わってきた。
京都の春季大会、秋季大会の一次戦は北部を除いて各学校のグラウンドで行われる。学校のグラウンドは球場のようにファンに試合を見せるために設計されている訳ではないから観戦環境としてはかなり悪い。内野には移動できずに外野の一隅でしか試合を観られないグラウンドもあるし、内野に近づけてもネットが幾重も張られているグラウンドもある。試合を観るだけならそれでも構わないのだがやはり写真を撮りたい。
ここ数年でカメラを構えない事には試合には集中出来ないようになってしまった。試合内容を全体的に、詳細に観るのであればバックネット裏に陣取るのが一番だ。投手の球種やコースも分かるし、守備陣系も見渡させる。一方、望遠レンズのファインダー越しに試合を観るとそういった事は一切分からない。ファインダーには選手達の姿が全面に映し出される。そんな限局的な世界では投手の球種も、コースも、守備陣系も分からない。
だがそういったものが見えない代わりに選手達の息吹、頬に流れ落ちる汗などを目にする事が出来る。肉眼では決して見る事の出来ない超望遠の世界を写真として切り抜き、時間を止める。そういった作業に取り付かれてしまったのだ。
高校野球春季大会の一次戦会場を見ていると、どの会場も撮影条件は厳しそうだ。それならば、思い切って先週に開幕した京滋大学野球を観に行こうと思い立った。京都の桜は今が満開であるが、その桜も月曜の雨で多くが散ってしまうだろう。太陽ヶ丘球場のライト後方には桜の木が並んでいる。花を咲かせてからわずかの時間で散ってしまう桜とともに大学生球児達の一瞬の時間を切り抜いておこうと考えたのだ。


第1試合はびわこ成蹊スポーツ大対大谷大の対戦。びわこ成蹊スポーツ大は第1節の佛教大戦に連敗、大谷大は今節からの登場となる。昨日行われた第1戦は大谷大が5対2で先勝。びわこ成蹊スポーツ大の守備が7失策と乱れたと新聞には書いてあった。成蹊大・真田(2年・北大津)、大谷大・竹林(4年・乙訓)の試合で始まった試合は今日も成蹊大の守備が乱れた。
2回表、成蹊大・二塁手の北村(4年・京都外大西)が2つのエラーを記録。西高時代は内外野を守れるオールラウンドプレイヤーとして活躍し、甲子園にも出場した北村は大学進学後も下級生の頃から新鋭チームである成蹊大を引っ張ってきた。チームの柱である北村の珍しいエラーから3点を失った成蹊大は意気消沈してしまったのか真田が5回に5本の長短打を浴びて更に5失点。0対8と大きくリードを広げられてしまった。
今日の北村は厄日で3回には内野安打で出塁するも牽制で刺されるなど攻守に精彩を欠いた。だが西高3年夏の決勝戦、京都成章・大島(立命館大)から、甲子園を決める3点三塁打を打った姿を撮影した身としては、凡ミスを犯す北村の姿を撮影するのもたまにはいいだろうと思えてくる。
試合は成蹊大が5回裏に倉田(3年・仁川学院)の三塁打などで2点を返すが、7回に大谷大打線が再び爆発。5回に続いての打者一巡の猛攻で6点を奪い、7回コールド勝ちを決めた。


それにしても大谷大打線はよく打つ。成蹊大外野陣の第一歩が鈍い事もあるが、外野フライと思われた打球が軽々と野手の頭を超えていく。早田(4年・立命館宇治)が主将となり、チームが引き締まった印象を受ける。投手陣の踏ん張りがあればこの春はかなりの好成績を残すかもしれない。
最終学年を迎えた北村、早田は高校時代から馴染みの選手であるが、試合の中では新しい季節にふさわしくフレッシュな選手達の活躍も目立った。
その中の一人が大谷大のショート・中川(2年・洛北)だ。洛北時代はショート、投手として活躍した中川は大学生活2年目にして早くも主力の座を掴んだ。昨夏、1年生ながら京都外大西で甲子園に出場した弟の大活躍も刺激になっているのだろう。7回にはレフトの頭を大きく超えるタイムリー三塁打を放った。
タイミングのいい事にちょうどこの時3塁側へと移動していた僕は二塁ベースを蹴る中川の姿を撮る事が出来た。躍動する中川の姿と薄桃色の桜の花が重なる。新しい季節のフレッシュな選手の活躍。この写真を撮れただけでも太陽ヶ丘に来た甲斐があった。


京滋大学野球連盟の王者に君臨する佛教大は慌しい騒動の中、春の幕開けを迎えた。まず監督交代があり宍戸新監督を迎えた。そしてチームに新鮮な勢いをもたらす筈の新2回生の数多くが野球部で取り決められている単位を取得する事が出来ずに夏まで部活動を謹慎しなければならないという。佛教大野球部は毎日10時近くまで学校から遠く離れた園部グラウンドで練習をしていると聞く。大学生なのにアルバイトをする時間も取れない。確かに大学生活と野球部の両立は難しいだろう。だが先輩達がその厳しい条件の中で伝統を築いてきた事を思えば、新2回生だけに大量の謹慎者が出た事は気の緩みがあったと言われても仕方がない。昨年ベンチ入りしていた選手は「秋を見ていてください」と、丸めた頭を照れ臭そうに撫でていた。
それでもやはり佛教大は強かった。すでに前節の成蹊大戦で勝ち点を挙げている佛教大は初回からエンジン全開。1回表、先頭・田中(4年・京都外大西)の三塁打で試合開始からわずか2分で1点を先制した。その後も佛教大の勢いは止まらない。西田(3年・天理)、太田(4年・福井商)のタイムリーや創成大の先発・浅田(4年・京都翔英)の制球難もあって打者が一巡。田中がこの回2本目の三塁打を打った時には点差は7点まで開いていた。


佛教大は続く2回に3点、3、4回にも1点ずつを挙げて12点の大量リードを奪う。守っては先発の谷掛(4年・須知)が140キロを超える快速球を武器に創成打線をねじ伏せていく。高校時代に147キロを記録した谷掛だったが、昨年の大学選手権では130キロの中盤止まりだった。スピードに魅力がある投手だけに少し心配していたが、この日は144キロを記録したという。復調気配のようで胸を撫で下ろした。
谷掛にとって今年一年、特にこの春は大切なシーズンになると思う。更なる高みを目指して上に登っていって欲しい。
谷掛にはその資質がある。誰もが140キロのボールを投げられるわけではない。140キロのスピードはいくら練習を積もうとも努力だけで投げられるようにはならない。谷掛はその資質を両親から授かった。野球人としてその資質を埋もらせるような事があってはならない。谷掛にはその責任があるのだ。
4年前、母校・須知高校の森の中のブルペンで見た谷掛の姿を思い出しながら、彼がこの太陽ヶ丘球場から大いなる未来に向かって羽ばたいていく姿を思い描いた。


今日の試合結果
大谷大14対3びわこ成蹊スポーツ大(7回コールド)
佛教大12対1京都創成大(7回コールド)


3回、飛球を落球する成蹊大・北村 5回、2点二塁打を放つ大谷大・加藤 試合後、長時間のミーティングを行った成蹊ナイン 1回、太田の二塁打で生還する佛教大・東修 佛教大の猛攻を受けた創成大・浅田 5回を1失点に抑えた佛教大・谷掛