2004年1月7日 洛北高校

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新しい年が明けて早くも1週間が経った。洛北高校野球部にとっては今日が冬休み最後の練習日。僕にとっては今年第1回目の練習観戦となる。
午後の1時に校門をくぐる。3年前、洛北高校の近くに職場があった。当時は校舎の建替え工事が行われていたが、すでに工事は終わっており、新しい校舎が出来上がっている。

校舎は新しいが、洛北は長い歴史を持つ学校だ。鳥羽高校の前身である京都二中が全国中等学校野球大会、いわゆる現在の夏の甲子園大会の第1回優勝校である事はよく知られているが、洛北の前身は京都一中。日本で最も古くに開校した中学校と言われている。
京都に住む者にとっては、洛北といえばすぐに名門というイメージが浮かび上がる。湯川秀樹、朝永振一郎と2人のノーベル賞学者を輩出。全国制覇経験のあるサッカー部を始め、ラグビー部や陸上部などのクラブ活動も盛んだ。
野球部も京都二中に負けじと大正6年、第3回の全国中等学校野球大会に出場。和歌山中に勝って全国大会で1勝を挙げている。洛北高校となってからは甲子園出場はない。しかし派手さはないが、毎年、堅実なチームを作ってくるというイメージがある。昨秋も1次戦を1位で通過した。

午後の練習はキャッチボールから始まった。ごく一般的な2人でのキャッチボールの後、3人1組となってカット・オフ・プレーを想定したキャッチボールが始まる。3人が送球ライン上に一直線に並ぶ。真ん中に入る選手がカットマン役。ボールを受け取った後、すぐに振り向いて送球する。こんなキャッチボールを見たのは初めてだ。チームそれぞれに工夫を凝らした練習方法がある。これを見ることが練習観戦の一番の楽しみと言っていい。
15分間のキャッチボールの後、選手たちが集合。佐藤監督から午後の練習の目的が言い渡される。
今日の練習の目的は捕球から送球動作へ移る際の体の使い方を覚えること。ボールをキャッチしてからテークバックに入るまでの腕の動かし方、送球方向への足の出し方、軸足からの体重移動など、技術的な話にたっぷりと時間が割かれる。

佐藤監督は大学卒業後、北嵯峨でのコーチ経験がある。その1年目に北嵯峨が初めての甲子園出場を果たした。
その話を聞いてなるほどと思った。卯瀧先生から、北嵯峨時代は技術的な事を深く掘り下げていったという話を聞いていた。
選手たちに自ら体を動かせて体の使い方を説明する佐藤監督を見ていると、きっと若き日の卯瀧先生もこんな風に指導をしていたのだろうと想像した。

佐藤監督によると1月は守備、打撃、走塁の型を作る時期であるということ。それぞれの基本の動きを体に覚えさせる事を目的とする。2月は1月に覚えた型のスピードを上げることが目的。そして3月からは戦術的な練習に入っていくという。
型を覚えるための練習は続く。選手たちが5グループに分かれてグランドに散らばる。一塁ベース付近に集まったグループは真正面に転がったゴロを捕球。セカンドグループはホームから見て右方向のゴロ、ショートグループは左方向のゴロ、サードグループは軟球を使ったゴロ。軟球の特性を活かし、高くバウンドさせたゴロを捕球する。外野グループはフライを捕球。もちろん、各グループとも捕球した後は、型を意識しながら送球の動作へと移る。1サイクル15分間で、順次、次のグループへと移っていく。

約2時間、この練習が続けられた。時刻は4時半を回っている。陽は落ち、グランドから冷たさが足に伝わってくる。
京都では大きな通りを1本上がる(北進するという意味)ごとに気温が1度ずつ下がると言われる。これは大袈裟な話ではなくて、今出川通では何ともなかった道路が、北山通まで上がると真っ白に凍てついていたという事を何度も経験している。洛北高校は北大路通と北山通のちょうど真ん中にある。比叡山も近く、南部とは違う寒さが体を包む。

練習の最後はノックで締められる。今日の練習でやってきた捕球から送球への体の動かし方、カット・オフ・プレーなど全ての項目がノックの中に集約される。
キャッチボールをしている時には出来ていた型が、実戦に近い練習になるとついおろそかになってしまう。
もちろん試合中に型を意識してプレーをしていたのでは話にならない。無意識の中で素早く、きちんとした型で動けるように1月、2月と練習が続けられていくのだろう。

ミーティングの中で、中村主将が「明日から学校が始まって生活のリズムが変わるけれど遅刻などがないように」と声をかける。そんな事は当たり前だと言ってしまう事は簡単だ。しかし、チームの雰囲気が悪ければ、当たり前の事が口に出せなくなってしまうものだ。そんな当たり前のことを口にできるキャプテンと、それを聞いているナインたちの顔を見ていると、試合の中で見せる堅実さはきっとこういう所から生まれてくるのだろうと思う。

帰り支度をする選手たちに佐藤監督が声をかける。
「冬休みの宿題はもう終わってるんやろな?」
「はい。今晩頑張ります」
笑い声が響く中、洛北の練習は終了した。
 


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