2004年1月15日 久御山高校

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自宅から15分ほど車を走らせると久御山高校の校舎が見えてくる。しかし校門はくぐらずに、学校の外周に沿って車を進める。
年末に宇治小学校で起こった襲撃事件の影響から、宇治市周辺の学校は警備に神経を尖らせている。部外者が校門から中に入ろうと思えば何かと面倒だということで、グランドの方に来て欲しいと言われていた。
グランドのすぐ横に車を停める。ほぼ同時に授業を終えた部員たちがグランドに姿を現した。

練習開始時間は3時30分。軽い体操の後にランニング。学校の外周を3周走る。1周目は団子状態であったのが、2周目、3周目と周を重ねるうちに列がばらけていく。長距離走は得意、不得意の差が出やすい。
1周目のトップを走っていたのが旧チームのエースだった宇土君。大学でも野球を続けるため練習に参加している。さすがは投手らしく、長距離を走るのは得意そうに見えるが、その宇土君を後輩たちが追い抜いていく。後輩たちの体力がついてきているということだろう。

選手たちがランニングをしている間、円山監督がトンボを片手にグランドを整備している。宇治(現立命館宇治)、西城陽を甲子園に導き、平成9年に久御山に赴任。僕の高校時代の恩師でもある。少し照れくささを感じながら挨拶をする。西城陽時代は30代だった円山監督も、もう50歳代になっている。
「もう年やから西城陽の頃のようには出来んわ」と笑う。「それでは選手たちを怒鳴る事も少なくなりましたか?」と聞くと「それがそうでもないんだわ」とまた笑う。

平成11年に、野球部の生徒がある卒業研究論文を書いた。その年の春夏の甲子園に出場した峰山、福知山商(福知山成美)の野球部と久御山野球部の3校を色々な角度から比較するという興味深い論文で、その中に監督の口癖を各校のナインに聞くという面白い項目があった。峰山・守本監督の口癖は「謙虚であれ」、福知山商・田所監督は「平安はもっと練習してるぞ」だったそうだ。そして、久御山の選手たちの答えは「馬鹿野郎」。
「僕はそんなに怒鳴っとるんだなって思ったよ(笑)」

オフシーズンの練習でも基本的にはボールとバットを使った練習を続けるが、他のクラブとの兼ね合いでグランドを使えないときは筋力トレーニングをする。特に今年のチームは基礎体力が高くないので例年より多目に筋力トレーニングを取り入れている。
秋の大会では初戦で鳥羽に0対1と惜敗した。投手力は及第点以上だが、打撃に課題が残る。「スイングはいい形で出来ているけれど打席でバットを振らない。動態視力の弱い選手が多いのかな・・・」

今日はグランドでの練習日。ボールを使うメニューが多いが、といっても実戦練習ではなく、とにかくよく走る。
ボールワークといって2人が3〜5メートル間隔で向かい合い、ボールをトスし合いながら走ったり、ダッシュをしながら補助者が投げるゴロやフライを捕球するといった練習が続く。極めつけはローテーションノック。
「HPで書いてあったけど、城陽高校がやっていたグルグルと回るあのノックの事や」
ノックを受けながらスタミナをつける事が出来るというローテーションノックは箕島高校の元監督だった尾藤さんが考え出したものらしい。そういえば円山監督が宇治で甲子園に初出場した61回大会は、箕島が春夏連覇を達成した大会だ。その箕島と延長18回の試合をした星稜と、宇治は初戦で対戦している。
選手たちはショート、セカンド、ファーストの位置に分かれる。円山監督がショートにゴロを打つ。捕球の後はセカンドに送球。そしてセカンドからファーストに送球される。6−4−3のダブルプレーの形だ。ファーストの選手はホームに走って行って円山監督にボールを渡し、そのままショートの守備位置につく。

今日の寒さは厳しい。手がかじかみ、シャッターを押すのにも微かな痛みが走る。女子マネージャーが傍に来て、缶のホットコーヒーと紅茶を差し出してくれた。
「円山先生からです。どちらでも好きな方を飲んでください」
有難く缶コーヒーを頂く。飲む前に手の中で缶コーヒーを転がす。かじかんでいた指先が温まる。感覚が戻った指で、再び選手たちの動きをカメラで追った。

17時20分にローテーションノックは終了。すでに陽は傾き、照明に灯が入る。照明と言っても夜に練習が出来るほどの明るさはない。グランドを僅かに照らす程度で、その僅かな明るさを求め、選手たちはバットとグラブを持って散っていく。
次の練習はバンドペッパー。2人1組となって1人はバンド、1人はその処理をする。左右に振り分けられるバンドを息を切らせながら処理する。1セット20本でこれを1人2セットこなす。本当によく走るチームだ。
バンドペッパーが終わる頃には完全に陽が落ちてボールは全く見えない。それでも練習は続く。ボールは使えないが、ダッシュ、サーキットトレーニングをこなして、完全下校時間となる6時になってようやく練習は終了した。

選手たちがグランドから離れ、女子マネージャーが照明の灯を落とす。それを確認し終えた円山監督が「ほら」とポケットから何かを取り出して彼女に手渡す。彼女の手の中には紅茶が握られていた。
 


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